#67+#68「砂の王国」(上)+(下)荻原 浩
証券会社のトレーダーだったけれども、いろいろあって奥さんに出て行かれて、ホームレスになった男性が主人公です。ホームレスの縄張り争いや、食事や防寒グッズを奪い合ったり、分け合ったりの中で、ホームレスになってしまったことへの絶望とちょっとした失敗や諦めの連鎖で、ホームレスになる可能性も感じました。
長身のイケメン、口数のすくないホームレスが、近所のコンビニやお惣菜の期限切れ前のお弁当などをよくもらえていました。辻占いで稼ぐ男は、占いのサクラを主人公に依頼し、鑑定のお客1人につき100円をもらうことになりました。占いのお客さんの身なりや言動から、悩みや背景を予想するテクニックと話術を見て、主人公は閃きます。イケメンを教祖にして、辻占いの男が教義や教祖のコメントを書き、主人公が新興宗教の設立や運営をすることを。
口数の少ないミステリアスなイケメン教祖に集まる女性信者、信者間でのお布施競争、信者を煽る教義など、アッという間に教団勢力が拡大し、教祖、辻占い、主人公の目指すものにギャップが出てきて・・・。
主人公が証券会社にで働いていた時に、いろいろ仕事のプレッシャーや不安もありながら奮闘していました。奥さんを責めることにできなかったことは話の中で分かるのですが、主人公がもっと奥さんに胸襟を開いて話していれば、主人公がホームレスになることはなかったんだろうと思うと、人生の岐路はちょっとした事情をきっかけに、大きく変わるんだろうな、という想いを強くしました。

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