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2025-08-13

読んだ本(2025-#71):海馬の尻尾

[No. 3969]

#71「海馬の尻尾」荻原 浩

恐ろしさを感じなかったり、他人の喜怒哀楽を認識したり共感できない場合、肝っ玉が太いとか経験的な特性ではなく、脳内の原始的器官である海馬とか、海馬の尻尾と呼ばれる小器官の機能不全が原因かもしれない、と判断された主人公。3年の懲役を終えて出所した反社会的勢力の1名。

舞台は、2度目の原発事故の影響で、不安を抱える大勢がいる社会です。極秘裏に不安を煽ったり、抑制しようとする心理実験や治験が行われていることは、機関の一部の者しか知りません。

主人公は、暴力的で残虐さが恐怖を感じないこと、アルコール中毒の治療も兼ねて、組長の好意で検査と入院をすることになりました。過酷な幼少期や両親からの愛が不足した年月が原因ともなって、恐怖を感じない、他人の感情を考慮することもないと思われていました。

病院の待合室で、急に懐けれた小さな女の子。彼女も脳の特性や疾患に関する治療や入院をしている様子。シングルマザーのママ、女の子の付き添いに元気がない様子を、主人公が気にするようになります。女の子と絡むのが最初はうざかったのに、徐々に気になり始めて、女の子の元気のなさが、主人公の感情認識に変化をもたらします。

物語は一気に読んでしまいます。騙し騙され、本当に信頼できる仲間とは誰かのか?組長か? 組の後輩か? 入院部屋の同居人か? 診察して治療してくれる医師か?

守りたい存在ができれば、パワーも出るし、生き甲斐も出てくるのだと思えます。主人公のその後が気になります。どうか笑顔が多い日々を送ってくれているように願います。

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