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2021-07-12

読んだ本(2021-#-31):ホワイトラビット

 [No.3407]

 #31「ホワイトラビット」伊坂 幸太郎

オリオン座の巨星ペテルギウスは、赤い恒星で地球から650光年離れているとされています。太陽の14倍くらいの直径で大きいですし、正座の中でも見つけやすいオリオン座の、中でも一番明るい目立つ星です。

今見えているペテルギウスは、640年前の星が発した光であり、仮に500年前にペテルギウスが消滅しているとしても、あと150年はペテルギウスが存在しているかのように、地球からは見ることができる、と考えると頭がこんがらがります。

同時に発生していたとしても、当事者同士がそのことを知り合えないという状況と、よく似ています。この伊坂作品も、見事な伏線です。ある関わり合いを持った複数の人物が、それぞれあまり絡み合うことなく、交互に同時進行でストーリーが進んでいく構成を、メリーゴーラウンド方式と呼ぶそうですが、登場人物と、その関係性と、時系列の流れを見失いそうになります。

なんとか見失わずに読み切ると、ああそうだったんだ、という感嘆と爽快な読後感を味わえます。正しいことが人を幸せにしないこともあるし、正しくないことが人に幸せな時間を与える、ということも真だと思います。法を冒した者は罰せられるべきですが、法を冒していない者でも罰せられるべき、という場合もあります。

伊坂幸太郎のメリーゴーラウンド方式の作品を読むたびに、非日常感を味わえて面白いのですが、実際の我々話の日常こそ、同時進行が発生しても、当事者同士が知り得ずに、ある関わりを持つ(事後的に持つとわかる)者どうしが、つながっているんだな、と気がつきました。

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