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2021-08-09

読んだ本(2021-#34): 実力も運のうち 能力主義は正義か?

[No.2853]

#34「実力も運のうち 能力主義は正義か?」マイケル・サンデル 著

学習機会の平等、雇用機会の均等、社会的な階級に縛られずに自分の学習や就業での成果が、目標達成や社会的処遇の向上などで報われるといいな、と思います。

1920年代のアメリカ有名大学の学生や、現代のハーバード大学などのアイビーリーグやスタンフォード大学のような有名私立大学でも、裕福な家庭の子供が圧倒的に学生に多いこと、学業成績ばかりでなく縁故や寄付金の多寡で決定されることも今もあること、が事実として切々と述べられています。

拙者が学生時代に、経済学の議論や勉強していた時に、価格や賃金の理論を読んでも、さっぱり理解できず、納得もできなかったのです。周囲の学生や教授からは、理論の勉強が足りないなんて指摘されましたが、やはり腑に落ちなかったのです。この本に書かれている価格や賃金、価値や成果には、とても納得性があるし、当時拙者が感じていたことに近いです。

欲しい人が多いのに、品薄であれば価格が上がることは理解しやすいですが、企業が求める知識や経験を持っていれば賃金が高くなるわけではないです。 結局サラリーマンの賃金は、会社が儲かっているかどうか、年齢やポジションが決定要因となることが多く、個人の業績や成果によって可変な部分はそんなに大きくないのです。

また業界として平均年収の高い業界もあるでしょうが、誰かが予見できるわけでもなく、結果として偶発的に業界の賃金が高いだけなのです。なので、景気の良さそうな業界を探して、安定的な生活ができるように勉強しないと、というのは矛盾もあるし、結果論でしかわからない、博打みたいなものですね。

自分の能力や業績も、客観的に評価されるというだけではなく、今まさに高く評価されること自体が、本人の能力というよりも運に近い。なので、自分の能力を求められることや高く評価されることに感謝すべき、というメッセージを受け取った心境です。

そもそも、優れた大学に進学できるのは、本人の学業の努力の前提として、家庭の裕福さがあります。ウォール街や不動産投資などの業界が、特定の有名大学出身者で固められているという、家庭の裕福さ ⇆ 大学への進学  ⇆ 高年収業界やビジネスとのパイプ、という関係です。

自分に能力があるから有名大学を出て豊かな生活ができる、は圧倒的に少数派である、というのが現代社会の偽らざる実態でもあります。

では裕福ではない家庭であれば、成功を掴めないかと言えば、そうでもないのです。マイケル・サンデル氏のメッセージとしては、謙虚であれ、です。

人生の豊かさとは何か、という問いを、拙者はまた考え続けようと思いました。

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