[No.2948]
#9 「バベル九朔」万城目 学
久しぶりの万城目作品です。いつものように、読み始めは設定と最初に起こる出来事の不条理さや非日常感満載な感じに、若干感情移入しにくいのですが、読み始めると止まりません。
祖父が建てた古い駅近くのビル「バベル」の管理人として、作家デビューを目指して脱サラした主人公。
テナントの借り手に、月々の水道料や電気代を集金に回ったり、消防点検やゴミ出しの片付けに奔走までせずに、悶々と過ごす日々。
まさか、バベルが太陽の使いに見守られた存在であり、亡き祖父が残した巨大なエネルギーの塊であり、天空にそびえ立ち、上に上に伸び続けているとは全然知らずに。
奇想天外な話として読みながらも、拙者も自分のこれまでを振り返ったり、今後に思いを馳せる良いきっかけにできそうな本であります。
もしあの時●●を選択していれば今どうなっていただろう、と思うことは拙者もありますし、今後の事に不安や迷いがあったりもします。自分が目指すものを掴めるか、近づけるか確信もなかったり、方法やタイミングに迷いもあります。
成果や望む結果がすぐに出ないとしても、諦めないで続けること、やっぱり挑戦してみないと、ゼロはゼロのままである、ということも、本著作は示唆していると思います。
安易に挑戦を、チャレンジを推奨するというものではなく、しなければゼロはゼロのままだ、という、ただそれだけです。
グラマナスなバストを強調するような黒いピタッとした服を着て、10cmの赤いヒールを履いた、大きなサングラスをかけたカラス女が、急に目の前に現れると、かなりびっくりすると思います。でも、カラス女ではないにしても、拙者の日常や毎日も、拙者が知らずにも見守ってくれている存在や想いがあるとすれば、良いなと思いました。
今も挑戦しようと思っている事がいろいろあります。この本を読んだのは、きっと、挑戦してみろ、という誰かからのメッセージのような気もします。
非日常的な出来事の物語から、とても日常的な気づきを得る、読書の醍醐味をまたかじわ得た気がします。
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