[No.3584]
#96「逆・タイムマシン経営論」楠木 健、杉浦 泰
どうすればビジネスを拡大できるか、何を変えれば利益を増やせるか、もっと仕事をやりやすくするにはプロセスや手順をどう変えればいいか、を考えないビジネスパーソンはいないと思います。
新聞や雑誌、セミナーや交流会で優れた事例や、成功や失敗のケーススタディを知ろうとするのは、有効や手段だとは思います。そこで話されることを聞いて、よく違和感を覚えていました。それ本当かな? 同じことをすれば、同じような成果が出るとは思ど。
今を知る、という意味において新聞や雑誌から情報を収集することは有用ですが、拙者自身は何かの正解やヒントが、新聞や雑誌には少ない、という見解を’持ってきています。
ビジネスの場でも、相関関係と因果関係が行動されている場面が少なくありません。お客様アンケートによると、価格が高いのでなかなか購入できないと回答が多いので、価格を下げたり、内容量を少なくしたり、パッケージを低価格にするとか、よくありそうな話です。
お客様の購買行動をミクロ経済で論じることにも、経済学を専攻していた時から馴染めませんでした。情報の対称性がある場合には、合理的な経済行動をとりそうですが、おなかがすいていればちょっと高くても食べるし、いい感じの店員さんならば、ネットショッピングで買った方が20%くらい安いけど、その店員さんから買いたくなるし。
相関関係と因果関係を混同せずに見るために、昔の新聞や雑誌記事を読んでみる。同時代性の罠、飛び道具トラップ、激動期トラップ、遠近歪曲トラップ、などのキーワードに始まるビジネス研究は染み入りました。
日本企業がERPを導入に奔走し、従来業務へのカスタマイズで奔走し、その後膨らむ維持費用に困る様子は、そばで見ていたので、何度も頷きました。アメリカやドイツの海外子会社のITマネージャーから15年前に聞いた話でした。なぜ日本の本社はERPをカスタマイズするの? 日本の本社は多品種・少量生産をアドバンテージとしているし、都度都度の製品カスタマイズを支えている調達、倉庫や製造の現場を、ERPに合わせるように説得できなかった、が当時の拙者が出した結論でした。ラグジュアリージャンルで多品種・少量で利益が出るとしても、汎用品のジャンルで多品種・少量をすると利益が出にくい、と感じました。
今でもその会社は、確固たるメーカーとして存在し続けていますし、信頼されている企業です、多品種・少量でも成長や勝ち残るチャンスはあるとは思います。
思考の時には、演繹と帰納を繰り返して間あげ抜いて、そしてやってみる、拙者にとってはこれが成果を出すためのプロセスかと思いました。新聞や雑誌の情報を参考にするけど、自分の課題を解決するために考え抜いてやってみる、思考と実践の組み合わせこそ、成果を出すための近道、と得ました。
Adobeのサブスクリプション成功事例、腹落ちのいい切り口でした。サブスクにしたからビジネスが拡大したというのは単なる側面で、もともとPhotoshopやIllustratorなどのソフトウェアが、デザインや編集で圧倒的な信頼やシェアを獲得していた、が大きな成功要因です。
相関県警と因果関係の混同、鶏が先か卵が先かの見極め、そんな思考のきっかけをこの本でえられたのは、とても効果の高い投資でした。
先日、講演を聞いた後に著者とお話しできたのも、うれしい事でした。
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