[No.2025]
#11「ローマ法王に米を食べさせた男」高野誠鮮
農業では得られる収入が少なく減っていく、若者は街や都会に出て行き、
農村には年老いた人々と、手入れが出来なくなった田畑が増えていく。
冬は豪雪地帯、雪かきをする人手も少なく、村からは子供達の声が消え、
活気も失われていく。
この本の舞台である石川県羽咋市の神子原地区に限ったことではなく、
多くの、ほとんどの農村が抱える共通の問題、悩みだろうと思います。
せっかく収穫したお米や野菜も、市場の需給バランスに影響されて
JAへの卸価格も変わるし、安定した収入にはならない。
目立つ地域産業があるわけではなく、役所からの交付金への依存度が高まる。
そんな田舎町を変えた実例がこの本にはあります。
東京でのマスコミ人間から一転、実家のお寺を継ぐ準備で田舎に戻り、
市役所の臨時職員として、いろんな知恵やアイデア、人脈や意地、
いろんな苦労をしながらも、ローマ法王がお米を食べてくれるようになり、
ミシュラン三ツ星のアラン・デュカスとも取引きし、スパークリング酒を造り、
烏帽子子の習わしで村に学生を呼び、地域の老人に明るい笑顔や村のすばらしさを
再認識してもらえた、そんな熱い実話です。
読んでいて何度か涙が出そうになりました。
同じ職場でも反対されて、何度となく乗り越えた様子、サラリーマンとして
共感し、勇気付けられることもありました。
拙者自身も田舎の出身です。
地元が元気なくなる様子を帰省の度に感じることに、いろんな思いがあります。
学生時代に、地域経済の再生につなげられる仕事ができるといい、
そんな思いで統計学を専攻したのであります。
今は、その思いにまだ着手できていませんが、熱い思いを蘇らせてくれます。
まだ諦めてはいません、いつかきっと、少しでも。
一気に読んだ250ページでした。
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