[No.3258]
#31「プルーストとイカ」メアリアン・ウルフ
プルーストとは、哲学者のマルセル・プルーストのことであり、イカとは中枢神経の研究対象として注目されたイカのことです。プルーストがイカを好きだった、という意味はありません、念の為。
エジプトのヒエログリフ、シュメール人の楔形文字、そしてギリシャに文字が出たのがアルファベットの発生につながり、という文字の歴史的経緯から、文字を読むことの脳科学的な発展の経緯についても、興味深く読みました。
読字が脳の各部分にどんな作用を与えているか、表音文字と表意文字、読字と聞き取りの脳科学的な作用の違いも興味深いです。特に、かな、カタカナ、漢字が独自にあり、表音文字と表意文字が混在する日本語を耳で聴いて、脳内にいろんな音や意味の共通する字句などを想像する事自体が、脳にかなり大きな多くの刺激を与えているという研究成果も興味深かったです。
読書することは、そのような脳内刺激があっていいというばかりでなく、他人の経験や知識を擬似的に体験することで、視野が広がるなどの効果は確かにありそうです。
しかし、ソクラテスが文字の開発や、書物として知識や経験を作成し、読む事に反対していたとは知りませんでした。その理由が洞察が深すぎます。文字を読んで理解したつもりになると、物事の本質を自分で考えなくなるから、というような懸念を持っていたそうです。読むばかりではなく、自分で考え抜くことの大事さは、メディアやインターネットに情報が溢れる現代にも、共通の懸念であります。
ディスレクシア(読字や識字の障害)への教育や学習支援も、ここまでの研究が積み重なって、海外ではいろんな成果も出ているような状況と比較すると、日本でのディスレクシアへの理解や、教育や学習支援がまだまだだと感じざるを得ません。
時間がかかってもいいから、いろいろ本を読んでみて、感じてみて、考えてみては、拙者にとっても今後大事な心がけ、いい時間になると思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿