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2023-12-04

読んだ本(2023-#54):脳の闇

[No.3345]

#54「脳の闇」中野 信子

記憶ができないって試験で苦労することもなく、難解な試験や高倍率の難関大学に入れる人を、拙者は単純に羨ましいし、すごいなぁと思います。それは、自分が実現できないことを実現している羨望や客観的な能力の高さについての尊敬の想いからです。

しかし、そんな人が、そんな特性を持っているからこその苦労や、疎外感や、生きづらさがあることには思いが至っていませんでした。

雑誌記事か何かの著者のコメントを読んで、著者に興味を持ち、書店で本を見つけて買って読んでみました。

脳科学者として、自分の半生を考察したり、人間同士の関係、組織心理学、社会心理学の根底にある脳の反応、それもホルモン分泌などの実証結果なども関連させて理解できました。

なぜ著名人の不倫報道が過熱するか、SNSなどの炎上、他人の不幸は蜜の味、また、リケジョの生き辛さを生み出す、男性や社会の心理的な反応などの例示、拙者には理解しやすかったです。

生存やと生殖が生きる目的の動植物の中で、言語や文字を通じてコミュニケーションを他人格と交わし、過去や未来に思いを馳せる生物は、ヒトだけだと思われます。ヒトだからこそ、生存や生殖の危機やリスクが低減した社会生活での、危機やリスクに関する事象として「承認欲求」がある、と捉えると、会社や社会での振る舞いや感情的な動きにも納得性があります。

そもそも、同じ物体を見ても、各自の脳で処理された結果、同じ色には見えず、どのくらいの色の違いがあるかも認識できない。つまり、他人と分かり合うことなんて、そもそもできない可能性が高いし、他人と分かり合えると期待しない方がいいと思えました。何かを共感したり、他人との違いを認識し、他人を尊重することが、結果として自分を尊重してもらえることになる、とも思えます。

著者自身の半生に基づく、少し暗めの暗喩やエピソードもあるし、章と章のつながりというよりも、著者の言いたいことが、散文的に書かれている印象ですが、それだけに著者の想いや気持ちがストレートに伝わってきたような気もしました。

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