[No.3430]
#33+#34「かがみの孤城」(上)(下)辻村 深月
中学校1年生の主人公、ある出来事がきっかけで登校できないようになり、自宅で過ごす日々です。この出来事、拙者に起こっても相当嫌な気持ちになりそうです。嫌な気持ちにさせられた者は学校に登校できなくなるくらいのダメージを負い、嫌な気持ちにさせた者は変わりなく登校し、特段処分を受けることもなく、ということは、実際にはあまりにも日常的に起こっている、と推察されるので、胸が痛くなります。
主人公の自宅の鏡が輝き、手を触れてみると鏡の中に引き込まれて、お城のような場所に入り込みました。そこでは自分以外の6名がいて、どうもみんな不登校の日々を送っていることが分かります。オオカミの仮面を被り、ドレスを着たオオカミさまから、城に中に願い事を叶えてくれる鍵が隠されているので、探し出した人が一つだけ願いを叶えることができる、と言います。
7名には、それぞれいろんな事情がありました。鏡の世界と実際の現実社会を行き来して、7名がそれぞれに想う気持ちも変わっていきます。次第に7名それぞれの現実社会が分かってきますが、お互いに共感できる関係性が構築されることで、気持ちが救われるようにもなります。
城で鍵を探す期限が迫る中で、誰がカギを探すのか、どんな願い事が叶えられるのか、そもそもなぜこの7人が鏡の中の孤城に呼ばれたのか、オオカミさまとは誰なのか、最後に一気にわかることもあり、下巻を読み始めて一気に読み終えました。
日常のちょっとした言動や、刑事罰になることはないけど、深く誰かが傷ついてしまう危うさを、著者は大事にしているのではないか、と思います。学校や職場での心ない発言や、いじめがまさにそんな感じです。言った本人が忘れてしまっても、言われた者はなかなか立ち直れなかったり、深い傷を負う事なんて、たくさんあると思います。誰かに何かを伝える時には、相手の気持ちをよく考えたうえで、発言することが大事です。
また、思いの足りない人の言動を、必要以上受け止めて傷つかないようにする図太さも同様に大事だとは思います。
7人が孤城に集まった理由、オオカミさまの正体が分かった時には、ほんのりと温かいものを感じましたし、拙者もオオカミさまが見てくれているといいな、と思いました。
著者の他の作品も、読んでみたくなりましたので、読んでみようと思います。この本も、チビ子のおススメ本であります。
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