[No.3889]
#39「日本はなぜ敗れるのか」山本 七平
国際政治や経済、ビジネスにおける競争で、日本が大きくリードする、大きな成果を出すことは、歴史上なかなかないように思います。
1990年代のMade in Japanが席巻していた家電などの隆盛も、今となれば、機能や品質も優れていていたとしても、大きな成功要因として、相対的な円安為替レートによる、日本の輸出による外貨獲得があると感じています。
大蔵省や通産省が主導したのか? 財界が描いたのかわかりませんが、国家戦略として日本の経済成長率を高めるデザインは、今は誰かがしているのでしょうか?
失敗することの構造的な分析が、成功するには必要と思います。2度とあってはなりませんが、失敗の分析に、日本の戦争体験をベースにすることは、とても意義があると思います。
日本人の気質に関する考察として読むのも興味深いです。
最近読んだり見たりして興味のあることに、明治維新があります。開国を尊王攘夷派に迫る薩長土肥、決して徳川幕府における重鎮的な藩ではなかったのに、明治維新後に急に要職に就くこともあり、大政奉還は民主化クーデターの様相を感じます。民衆が指示したというのではなく、薩長土肥のキーマン同士の連合が動かしたと見ますが、右向け右で、民衆は天皇を現人神と崇め、財を成した政商生まれたんだと思います。
国家の存亡をかけた戦い、中国、ヨーロッパの歴史には数多くありますが、日本で国家存亡を懸けたのは、1941年に始まった戦争が初めてだったのかもしれません。
どうすれば勝てるか?については、マルコム・グラッドウェルの 逆転! が印象に残ります。敗ける原因の真逆、どうすれば勝てるかの示唆に富んでいます。共通するのは、実態を見る事、実際を理解することの重要性です。それから、本気で勝とうとする気持ち、自分がやらねば誰がやる、というマインドセットです。
仕事でも当てはまることだと思います。
2024年のMLBロサンゼルス・ドジャースのワールドシリーズチャンピオンは、大谷翔平選手の大活躍で強烈に印象に残りました。ベンチの様子、出場する選手の個としての努力と、チームとしての結束も、とても強く印象に残りました。
この本の「日本」とは、何を指すのだろうか、と考えます。自己中心的な人が多いとは思わないのですが、誰かのためにちょっと気遣いとか減っている気がするし、誰か何か困っているのに見て見ぬふりすることも多くなっている気もします。
とても拙者が要約するのは難しいのですが、組織の秩序やルールが徹底されるものの、そもそもの意義は忘れられて、形骸化した表面的な慣行のみが、当たり前のように受け継がれていき、改善の提案や前例批判を避けようとすることが、根幹にあるように感じました。
戦いに勝つために徹底的に相手や環境を調べること、聞くばかりでなく自分で見ること、自分の成功体験に依存せず、過去の自分を否定する潔さを持つこと、他人の優れた考察や意見を素直に受け止めること、関係者の立場になって我が事と捉えること。
手元に置いておこうと思います。きっとまた読んでみて、その時に自分で感じたことを、また学びにしようと思います。
もう少し、自分でも咀嚼して理解する必要がありますが、とても大事だと感じる作者の言葉をメモしておきます。
明治以降の奇妙な「通常性を把握しないことを通常性」とする性向、いわば、ある力に拘束さえて自己の真の規範を口にできず、結局は、自分を含めてすべての人を苦しめる「虚構の自己」を主張することが通常性になっている。
自分で見て聞いて、自分で考え抜いて、どうあるべきかを周囲にも謳い、実践せよ、と背中を押していただいた、と感じております。