#8「利己的な遺伝子」リチャード・ドーキンス著 日高敏隆 等訳
経済学部への進学を希望しておりながらも、得意科目は国語と生物、苦手科目は数学と社会という高校生でした。そして実際に進学したのは法学で、大学院は経済学に進んだ拙者が、経済的に余裕がない中、経済学の専門書を古本屋で探して勉強しておりました。そんな中で紀伊国屋書店で一目惚れした「利己的な遺伝子」というタイトル。2,800円という価格は、昼食であれば7回分、自炊の食料としたら10回分に相当するにもかかわらず、「利己的な遺伝子」を迷わず買ってしまった、という縁のある本です。
購入後、5回の引越しをしましたが、その度に大事に持って移動しましたが、どんな内容か、よくわからなくなったので、久しぶりに読んでみました。
理科の授業で聞いたような、理解したような内容に、ずーっともやっとしていました。用不用説、適者生存とかのキーワード、高所の植物を食すことに適したキリン、キリンが首を長くしたから生き残った、というくだり。
・キリンが首を長くしたいと思ったの?
・獲得形質は子孫に遺伝しないのではなかったか?
本著は、生物とは、遺伝子自身が生存するために利用している機械、という立場で捉えており、とても興味深いです。生物にとって有意か否かではなく、遺伝子にとって有意か否かが、進化の決定要因であるように捉えた説明が興味深いです。
鳥が雛を育てるのは、雛に愛情を持つというよりも、自分の遺伝子を生存させるという意味であり、遺伝子を生存させるという意味で雛を育てるよりも、別に卵を産んだ方がいいと判断すれば、雛を育てることをやめる、らしいです。いろんな鳥はいると思いますけど。
自分=遺伝子にとって利己的に行動する、進化するのは、生物の中でも、微生物、昆虫、両棲類、爬虫類、鳥類、魚類等では、拙者は合点がいきました。
社会的生物の代表と思われるアリやハチについても、利己的と捉えることができました。生殖能力のないメスや働きアリは、巣というコロニーを生物と見れば、コロニーを構成する役割として必要となり、餌を集める、幼虫を育てる、餌を与える、外敵から守る、という役割に特化しているのである、と。アリやハチの個体の生存最適性は考慮しない、という考えです。
生物は、あくまでも遺伝子レベルで利己的な行動をする、としても、哺乳類についてはやはり特別感は否めません。感情や意思を持つ生物は、利己的な行動ではない、「人間の文化」(著者はミーム: memeと呼ぶ)に影響を受けた行動を取ります。
仲間の亡骸を悼む行動をとる像、幼少期に育てられた人間に数年後に再会し抱きついて喜ぶライオン、動物園のブースに落ちてきた人間の子供を助けて仲間の攻撃から守ろうとしたゴリラ などのエピソードは、利己的とは真逆の利他的な行動としか説明できません。
生物の進化がどのように起こったかを分析することはできたとしても、なぜそのような進化になったかは、やはりわからない、進化はあくまでも結果論である、が拙者の考えです。
また、生物の中でも、意思や文化を持つ生物は進化の中でも特殊な進化を遂げる存在であること。人間は利他的な社会生活をおくることで、全体最適に近づける可能性が高いことを示唆してくれています。
世界最先端の知恵や知識を、こうやって手に取って読めるなんて、やっぱり読書はいい。
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