「とっぴんぱらりの風太郎」万城目 学
1冊で746ページという分厚い本です。今までの読んだ中で最も分厚い小説だと思います。いつも読み終わった本を買い取ってもらう業者さん、古本も販売されているので、その業者さんから買った本です。
お気に入りの万城目作品をお気に入りのコーヒーショップで読み始めて驚きました。予想もしなかった、まさかの著者サイン本です。いつもよりも、さらに作品を読む意気込みが増します。
時は豊臣秀吉から、徳川時代になり大坂の陣の前。伊賀で忍びであった風太郎が、いろいろあって、京の都でひょうたん売りの仕事を手伝う日々から始まります。ひょうたんに閉じ込められていた神様に話しかけられます。都の往時の裏側で、織田信長の頃から武功を成就させる力を持つ神様、伊賀の忍び時代からの同僚や師匠、徳川方と豊臣方で蠢く忍びが割拠する日々です。
あるビジネスマーケットでリーダーであるA社と、競合である2番手のB社。A社やB社それぞれのグループ会社、A社やB社の取引会社のそれぞれが、自分の生存をかけていろんな動きをすると思います。そのぞれの社員は、マーケットの情勢を見つつ、どちらかの味方になったり、情報を交換したり、スパイ的な動きをしたり、競合に異動したり、マーケットから去ったり、以前の競合やライバルとくっついたり離れたりもするでしょう。
新しく自分の道を切り開いたり、そのマーケットで頑張り続けたり、どっちにしても自分で決めて頑張るしかないのですが、A社とB社の関係や、マーケットのトレンドによって影響を受けるのも確かかと思います。この風太郎のように命を賭して毎日を生きる日常ではないですが、拙者達の毎日も同じような側面を感じます。
伊賀の忍びを抜けたものの、忍びに戻る思いを知られた風太郎(ぷーたろう)、ねね殿(北の政所)や豊臣秀頼のために人肌脱ぐにしても、徳川方の追手や忍びからの攻撃を交わしながら、燃え盛る大坂城内に忍び込み・・・。
どうしてもロシアによるウクライナ侵攻のことを思います。どんな正義や思惑があったとしての、いずれの兵力にも親がおり、子がおり、愛すべき友人や恋人のいる者達が攻撃し合うのは、数年経てば、どちらが正しいかではなく、ただ失われた命や時間が惜しくなるだけだと思うのです。生命や健康に優先するものは、やはりない、と思いました。
戦国時代を舞台にした万城目ワールド、満喫しました。
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