[No.3069]
#46「宵山万華鏡」森見 登美彦
京都で生活したことがある拙者は、碁盤の目のような街並みの夕方の影に、何か「妖」なモノを感じる感覚が少し分かります。平安の時代からの都であり、多くの寺社仏閣があり、いろんな戦があって、今に至りますので、いろんな想いや情念も繰り広げられたと思うと、夏の湿気もいろんな物を感じるのであります。
祇園祭は、四条通にはよくこんなに人が集まるな、と思うくらいの人だかりですし、縦の室町、西洞院などの通りには、山鉾が飾られて、小さい通りなのに、行き交う人が途切れない、そんな街の中にも、至る所に影や行き止まりもあり、確かに非日常の「妖」や「陰」や「幻」があちらこちらにあります。
森見ワールドの、京を自由奔放に満喫する酔狂な面々も活躍する本作ですが、祇園祭が過去とのパラレルワールド、タイムトンネル、そんなこともあるかもな、という気持ちになります。あれだけの人混みだと、人ではない存在も跋扈しているのではないか、と思えてきます。
人混みでは、子供や家族とはぐれないように、手を離さないように、暗闇には行かないように、と怖がりな拙者は思うのであります。
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