[No.3530]
#67「卒業のための犯罪プラン」浅瀬 明
ライトノベルというカテゴリーの定義はよくわからないのですが、表紙がイラストでマンガっぽかったりすると、ライトという言葉に、軽い、容易な、という意味を勝手に感じ取ってしまっていました。
学内で起業しポイントを獲得し、学内で利用できるポイントが単位にも変換できるという木津庭商科大学を舞台に、卒業をかけたコンゲーム小説です。
この本を読んでみて良かったと思うことは2つあります。まず一つ目は、読んで楽しかった、ということ。二つ目は、幸せとは何かについて、拙者のこれまでの仮説を補完することができたということです。
登場人物のセリフとして展開される、幸せの定義や考え方が、とても素晴らしく共感できるので、忘れないようにここにメモしておきます。
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161ページの岩内の言葉
「まあ、聞きなさい。まず、幸せっていうのは相対的なものなの。同じ事象が起きたとしても、対象の立ち位置によって幸福かどうかは変わる。食べていくのも苦しいような貧しい人にとっては、パンをお腹いっぱい食べるだけで幸福を感じるでしょう。けど、裕福に暮らす人にとってはパンだけを満腹まで食べるなんて苦痛かもしれない。モテない人にとっては異性のアイドルと数秒間握手するだけで幸福かもしれない。働いてばかりの人にとっては、たまの休みに家で寝ているだけで幸福かもしれない。周囲から認められたことのない人は、SNSのいいねの数が幸福かもしれない」
162ページの岩内の言葉
「そこで私は考えたのよ、なぜ幸福は相対的に感じるものなのかだろうかと」
「それはね、人が慣れる生き物だからよ」
「今は幸福なことでもいずれは慣れるって単純なことよ。ほら、慣性の法則ってあるでしょう。電車やエレベータが一定の速度で動いているときは、乗っている人は揺れを感じない。加速したり、減速したりしたときにだけ揺れを感じるもの。幸福も同じでその変化や差に幸せを感じる。時速10キロでも100キロでも速度が一定だと何も感じないように、生活水準も年収100万も年収1,000万一定なら何も感じない。年収が100万から200万に増える変化に人は幸福を感じる。『豊かである』ことが幸せなんじゃなくて『豊かになる』って変化が幸せなの。それが幸福は相対的に感じるってこと」
163ページの岩内の言葉
「日々の生活の中に巧みに変化や違いを取り込んでいるから幸福に慣れにくい。だから小さな違いがわかる人ほど幸せなのよ」
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第22回「このミステリーがすごい」大賞・文庫グランプリになったデビュー作、著者は1987年生まれ、現在書店員として働いている覆面作家とのこと。次の作品も読んでみたいです。
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