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2024-09-14

読んだ本(2024-#74):運は遺伝する


[No.3529]
#74「運は遺伝する」橘 玲、安藤 寿康

タイトルを見て、人は、生まれながらにして運が決まっている、運命や人生が決まっている、と理解すると本書で述べられていることを完全に誤解している、と言えます。
「遺伝子」や「遺伝」について、もっと理解したいと思いました。学業成績や社会的成功は、遺伝などではなく、個人の努力で得られるもの、と拙者も信じたいです。生まれながらにして、持たざる者は、何かを成し遂げることもできない、とは思いたくないからです。

行動遺伝学での研究成果を少しずつ理解できれば、「遺伝する」の意味、性格やパーソナリティが年齢を重ねるほど、環境ではなく本来生物的に保有する遺伝的な特性の影響が強くなることは理解できます。それらの傾向を、「運は遺伝する」と表現することは妥当だと思います。

遺伝学の研究成果は、ナチス時代の影響を感じる優生学的な考え方を、忌避する傾向はあると思います。努力しても遺伝的に劣勢であれば、成長や成果が出にくい、とも考えたくないですが、現時点での遺伝に関する科学的な確認が行われている、ということには驚きました。肉体的な特性ばかりでなく、以下のような精神的特性と関連する遺伝子がわかっているとは知りませんでした。
  • 協調性:FKBP8、イムノフェリンと呼ばれるタンパク質を産生
  • 不確実なことへの恐れ:FYN、脳神経の増殖と形成に影響を与える
  • 落ち込みやすさ:ADRA2A、アドレナリン受容体に関与
  • 恐怖への反応度:CNR1、カンノビノイドの受容体に関与
自分の遺伝子検査を行なって、自分の遺伝子がどんな特性を持っているかを知って、自分の特性にとっていい方法や方向を選択肢と選ぶ、というのは、本人にとっても、周囲にとってもいいことも多いような気がします。いわば、アレルギー食材を調べて知っておけば、不意にアレルギー食材を食べてアナフィラキシーショックを起こす、という事態を防ぐことも可能になります。

社会生活では、遺伝的特性と言語能力の組み合わせが、周囲に与える印象や協調性とも関連が強そうなことも、この本で気がつきました。

偶発的に思える発生事象も、その人自身の持つ行動規範や判断基準に影響を受けて発生していると考えられます。その行動規範や判断基準こそ、遺伝率による因果関係と言えることには同意できます。

遺伝的特性で何かが全て成し遂げられる訳ではなく、遺伝的優位性がなければ諦めた方がいい訳でもなく、楽しいと思えることを突き詰めると、成果が出たり、人生を楽しいと感じることができる旨が、結論的に述べられているのも安心しました。

幼児教育、お稽古事をいろいろさせた方がいいのか、英語にはなるべく早くから通わせた方がいいのか、そんなことを考えて悩んでいるパパやママがこの本を読むと、すごい悩んだり、周囲のパパやママとは意見の相違に気がついたり、迷うことが多くなりそうな本だと思います。

遺伝子検査に興味を持ちました。自分の遺伝的特性を知ることはメリットもありますが、遺伝子検査の結果は、非常に機微な個人情報にもなりますから、取り扱いはものすごく難しいと思います。

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