#14「人生オークション」原田 ひ香
最近、原田ひ香作品を読むことが増えております。チビ子曰く、拙者が好きそうな文体とかストーリーらしいですけど。
不倫の末の離婚で一人暮らしを始めた叔母の、荷物整理を手伝う中で、いろんな叔母の所有物をオークションに出すことになりました。
拙者もオークションで買ったり、売ったりしていますが、買った値段と売れる値段、売れそうだと予想した値段と売れた値段のギャップに驚いたこともいろいろあります。
テニスラケットの名器 Wilson ProStaff 85 Midsizeは、2年週一で使っていましたが、買った時の値段で売れました。もちろん大事に使っていて、痛みはほとんどなかったです。
拙者にとっては、当時買えなかった物を、美品でお手軽に入手できたこともあります。買わなきゃよかった、と感じたことはないです。荷物を送ってくれた売主も、丁寧な梱包であることがほとんどです。
価格がどのようなプロセスや条件で決定するのか、経済学的に説明はあったような気はしますが、買いたいという人と売ろうとする人が合意した金額、であることは間違いなく、オークションはその最も原理的な価格決定システムと言えます。相手によって、タイミングによってによっても可変な方が自然です。
ある意味、そんな移ろいやすいのが現実社会であり、日常であるとすれば、みんな同じ時期に卒業して、就職して、同じお年頃に結婚して、というようなライフステージの変化を、他人と比較して、気にする必要もないのだろうと思えます。
世間体とは、誰が何を気にしているのか、何のために気にするのか、を考えると、本人不在の発想が透けて見えるような気がします。護送船団方式的な思考も減ってきているような気がしますが、自分さえよければ、とか、情報強者であろうとする思考は、強まっているように思います。
自分で意志を持ち、関連情報や状況を調べて、必要なスキルやツールを磨いたり備えたりして、チャンスを探しておかなければ、なかなか道が開けない、という現代の厳しさを感じました。一方、始終そんな生活では疲れてしまうから、リラックスも必要だし、心も体にも休養が必要だとも思います。
経済学でよく見た寓話を思い出します。ニューヨークでバリバリ長時間働くエリートビジネスマンが、リゾートの浜辺の日陰でハンモックに揺られています。
通りかかった現地の人に、嫌みと自慢を言うのです。
「私はビジネスの最先端で成功したから、こんなリゾートを満喫している」
「勉強もしたし、競争にも勝ったから今の仕事や地位も勝ち取った」
「ファーストクラスに乗って、豪華なホテルにも泊まっている」
通りかかった現地の人は言います。
「毎日のんびり過ごしてきたけど、毎日ここの浜辺を満喫できているよ」
エリートビジネスマンと現地の人、豊かな生活となるとどちらが豊かな生活なのですかね。本の内容から外れて、思いが膨らんで、この寓話を思い出しました。
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