フォロワー

2023-11-10

読んだ本(2023-#53):べらぼうくん

[No.3333]

#53「べらぼうくん」万城目 学

Aさんは、京都大学を卒業後、大手化学素材メーカーに就職され、数年かけて新人賞を取って、映画化されたり人気作家となりました。

Bさんは、大学時代に勉強に打ち込むわけでもなく、川を眺めてぼーっとする時間を無為に過ごしたり、何をしたいかなどと考えをまとめたり、就職活動で自分をアピールすることもせず、何とか計算能力が潜在的に高かったことを評価されてか、就職しました。しかし、仕事に打ち込む気力もなく数年で退職し、伯母さんが管理人をしていた雑居ビルに転がり込み、伯母さんに代わってビル管理人となったものの、無為な時間を過ごしていました。

Aさんは成功者や勝ち組な印象を与えますが、Bさんは惰性とか、無気力とか、依存みたいなネガティブな言葉が連想されます。でも、実際のところ、AさんもBさんも同一人物、いずれも万城目学氏のことです。

この本は、万城目学氏が週刊誌に連載していたエッセイを書籍化されたものです。

自信にあふれるというよりも自信はなく、戦略的というよりもその場その場で対応するノリを感じます。デビュー作「鴨川ホルモー」も、最初に応募した時には選外だったことも驚きました。拙者は、万城目作品である「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」を映画で観ましたが、独特で強烈な世界観を感じました。そんな特徴のある作品を生み出す万城目氏も、拙者とおなじような凡人性や、自己の怠惰な気持ちに負けたりすることがあるのだとすると、なんとなく元気も出てきます。

大学生時代をモラトリアムと称するのも、もう30年以上前からと思います。猶予期間に何かの専門性を高めるための勉強や準備に邁進するという過ごし方は否定しません。でも、少しだけですが万城目氏と同じようにモラトリアム期間を友人より長めに過ごしたと自覚する拙者は、人から見れば無為に見える日々にも、その後の人生においてプラスに作用する可能性が十分にある、ということです。

大人になって成長や進化し続ける必要があるのですが、大人になっても興味を持ち続けたり、面白がる性分は、モラトリアム期間に醸成されるのではないか、が拙者の仮説だったりします。つまり、モラトリアムも捨てたもんじゃない、ということ。

0 件のコメント: