[No.3994]
#82「なぜ僕らは働くのか」池上彰 監修
装丁のイメージや、わかりやすい図や絵での説明が多い事、漫画での主人公の日常の進行などから、小学校高学年や中高生だけがターゲットになっている印象を受けますが、それは大きな勘違いです。
就職や転職に悩んだりする若者、子供に接する大人や親にとって、とても意義深い気付きのある本です。
親でさえも、自分の子供になぜ勉強するのか、どんな仕事に就いたらいいか、どう生きるべきか、をわかりやすく、聞き手にとって意義のある説明がしてあげられるかと聞かれると、説明できない、子供が納得感ない、という状況の方が多くなるかもしれません。
自分や周囲の経験や環境は、やはり限定的であるので、この本のような多様な仕事観やライフスタイルをわかりやすく伝えることは、とても難しいのだと思います。
周囲のほとんどが大学や専門学校に進学する、地方の公立高校に通っていた拙者は、大学に進学して、どんな勉強をして何を目指すかなんて、深く考えたこともなく、とにかく大学に合格しなくては、と思っていました。
実際に大学入学後、一般教養の講義がほとんどでつまらなく感じました。周囲には、早々に公務員試験を目指すとか、安定した業界として金融への就職を目指すとか、話す同期もいましたが、何を言っているのだろうと傍観もせず。
高校時代の同じクラスの女の子、当時から学校教師になることを目指していて、難関の国立大学に推薦で進学していました。その子の電話番号を誰かに教えてもらって、電話をかけて聞いたみたんです。今の自分は大学の授業に興味持てないし、やりたい事もないし、せっかく大学に進学したのに、と思うと。
今はなくてもいいんんじゃない、とその子は言ってくれました。そのうち面白い事、興味が持てる事に出会った時に、本気で面白いと思えたらいいし、きっとそんな事もあると思う、と。
その1年後に、興味の持てる専門科目に出会い、指導教授のおかげでいろいろ挑戦して、ゼミ生とも有意義に過ごし、大学院に進学しました。その後進路を変更したり、就職後にいろいろ葛藤もあったし、転職後にようやく自分の持ち味や強みを出したい仕事にも巡り会えました。
もう四半世紀も前の事ですから、その子はもう憶えていないかもしれませんが、この本を読んで、その出来事を思い出しました。
キャリア理論の中の代表的な考え方の一つである「計画的偶発性理論/計画された偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱されたとのこと。
「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」、その偶然を計画的に設計して自分のキャリアを良いものにしていこう、というキャリアパスに関するポジティブな考え方だそうです。
本でも紹介された、よいエッセンスをメモ、メモ。
「計画された偶発性」理論を実践するための5箇条
- 好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続けること
- 持続性:失敗に屈せず、努力し続けること
- 楽観性:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
- 柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
- 冒険心:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと