[No.3215]
#17「テッパン」上田 健次
21世紀を大人で迎える、昭和の時代に中学時代を送った拙者にとっては、懐かしい気持ちで中学時代を思い出させてくれる本になりました。
銀座「四宝堂」文具店で知った作家で、どうしても他の著作を読んでみたくなって購入しました。
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中学3年で夏期講習に通う主人公は、他の中学で喧嘩に強く危ない東屋(あずまや)と席が近くになりました。周囲の面々は、東家にかかわらない方がいいと言うものの、話してみると優しく、テキ屋稼業を中学生でやりながら、父親を亡くし、別れた母親から経済的にも親から独立し、喧嘩も強く、勉強の成績も決して悪くない事に驚きます。
そんな東屋の将来設計や、厳しい現実を見ながらも自分の夢を語る姿に、主人公は刺激を受けます。両親に優しくしてもらいながらも、自分の将来について何も真剣に考えていない事に。
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拙者も中学とか高校のことを思い出しました。2年くらいの濃密な期間で、自分の将来に想いを持っていたり、厳しい現実を見据えていた友人もいました。
高校に進学してから、一切その後の話を聞くこともないですが、その友人も社会人になって25年を超えています。今健康なのか、家族がいるのか、どんな仕事をしているのか、今何を楽しいと思っていたり、気持ちを燃やしているのか。
拙者は、高校卒業して大学に入学しても、将来何を目指そうかよくわからないままでした。たまたま大学2年の時にお世話になった教授の研究に興味を持ち、進学して、就職して。転職を何度かして今に至りますが、自分で勝負したい仕事ができています。そんな様子を知っている中学や高校時代の友人も、両手の指で足りるくらいだと思います。
でも拙者はラッキーです。高校卒業後30年を経過して、ひょんなことから引越し先の近所に住んでいる高校時代の仲良かった友人と再会しました。彼は、高校当時に聞いていた将来の夢を実現し、その仕事で生きていました。友人に、尊敬する、と言えました。
本人は、まあそんなに大したことでもない、と言ってましたが、あの時期に聞かせてもらった夢を実現した、と知って嬉しくて、羨ましかったのです。今では仕事の相談にも乗ってくれるのも助かります。
友達のありがたさを再認識した本です。遠くにいるか近くにいるかではなく、会える頻度が問題ではなく、友達とは時間も距離も超えて、気持ちや想いを寄せ合える存在です。メールやチャットをよくしているか、も実はあまり関係ないのかもしれません。
実際、なかなか友達には会えないですけど、会えばどのくらい会ってなかったなんて気にしない友達が拙者にはいてくれます。せっかく会える時には、こんな面白いことあった、と言えるように、元気に仕事も頑張ろうと毎日思っています。