[No.3396]
#14「傷つきやすくなった世界で」石田 衣良
R25連載されていたエッセイのまとめ、2007年頃の連載です。今から15年以上前のエッセイですが、今読むと著者の洞察に見えた憂いや、社会への愛情に気が付きます。
直木賞受賞の作家さんに失礼かもしれませんが、文章が読んでいて、論理構成や流れ、語彙や韻などがとても拙者にとって心地がいいです。
2007年当時の生き辛さ、社会の格差、日本人の同調性や同質性への脅迫などは、今のインスタ疲れ、映え疲れもお見通しの指摘です。
R25に連載していることもあって、20代、30代の若者に、リラックスと嫌みのないアドバイスとそっと背中を押してあげているような愛を存分に感じます。
40代、50代、60代が読んでも、感じるものはあると思います。周囲に合わせる、流されるばかりでなく、自分の考えを持ち表明できることは、ビジネスでもプライベートでも、やはり大事だと気づかせてくれます。
表立って反対せずにリーダーの言うとおりに進めることはスムーズですが、本当に解決すべき課題を解決できるのか、メンバーは真剣に考えて、必要に応じては反対を表明したり、他のいいアイデアを出さなければならないのです。
反論せずに進めてくれるメンバーをいいメンバー、何か反対するメンバーを悪いメンバーとラベル付けているビジネスの現場も、残念ながらあるように感じます。
実際に、リーダーの立場になると、ことあるごとに突っかかれているように感じてしまう事もあるでしょうが、拙者はやはり特に若手に分かりやすく話す、意見やアイデアを言ってもらえるように気遣いや配慮をするのは、ベテランやリーダーの重要な役目だと思います。
同調ばかりでは、大きな変化や改善、イノベーションなんて起こりませんから、成長も鈍化するし、進歩もなくなるのです。摩擦や衝突は心地いいものではないかもしれませんが、目指すものを実現するための仕事の場では、忌憚なく、意見を言い合いたいです。
反対されたり、賛同されなかったりしてもいいじゃないですか。石田さんは作品の最初のページに、次のような言葉を自筆で書いてくれています。
その傷が、きっと君の誇りになる。
失敗しなければ成功はないし、傷ついた事がなければ、人に優しくもできないかもしれませんね。拙者のつたないビジネスマン人生も、失敗があるからこそうまくいった事もあるし、転職の採用インタビューでは、失敗の経験ははっきり言ってとてもいいネタになります。
この本を読んで、自分の意見を持つことの重要性を再認識しますし、自分の意見を持つためには、自分で考え抜くことが必要だと気づくので、やはり自分の哲学や考えるスタイル、習慣をつけなければ、いい大人、おもろい人生にはならない気もします。