[No.3157]
#72「ファスト&スロー(下)」ダニエル・カーネマン著 [訳] 村井章子
積読になっていた名著、7年越しで読了です。(上)もかなり刺激的でした。ですが、ウイットに富んだ言い回しと、拙者にも理解しやすい例示と解説は、読んでいるだけで少し偉くなったような気持ちにもさせてくれました。
人間の意思決定に影響を与えるシステム1とシステム2。
システム1の担当は直感や感情、システム2の担当は熟慮です。気まぐれなシステム1と、怠け者のシステム2。
辻褄合わせに走ってしまうシステム1。
カーネマン曰く「私たちが頻繁に誤りを犯すのは、システム2の知識や能力不足」とのこと。これらの思考の特徴や特性の組み合わせで、私たちが意思決定しておる、うっかりも、勘違いも、思い込みも、錯覚も起こしがちです。
経済学における意志決定の定義は、「経済合理的である」という前提の時代に勉強をしましたが、拙者は当初から、「経済合理的な」ホモエコノミクスなんて実在しないし、実在しないものをモデルとして論じる経済学に興味が持てなくなりました。
ダニエル・カーネマン達が牽引して発達した行動経済学は、人間の心理的な側面にフォーカスすることで、経済活動を考えていると思います。
拙者、マーケティングや広告制作を経験しました。学校では行動経済学的な意見は、近代経済学を知らないやつ、的な見方をされた印象を受けましたが、ビジネスの場では、行動経済学的なアプローチこそが議論の焦点であったので、勉強とビジネスの大きなギャップを感じたことを思い出します。
村井章子さんの訳です。道徳感情論、大暴落1929もそうでしたが、村井さんの訳は読みやすくて好きです。
2022年の読んだ本、これにて72冊目です。これまでの人生で最も多く読んだ年になりました。2023年は、もっと面白い本をいろいろ読んでみて、興味や関心を広げたり、少しは知識や知恵を強化したいものです。